沖島一周

Kayacking

滋賀県の近江八幡にある宮ヶ浜水泳場から見渡すことができる沖島(おきしま、おきのしま)は、日本で唯一の淡水の有人島であるそうな。

近江八幡キャンプ場も併設されていて、夏場は水遊びなどをする家族連れで賑わっている。駐車料金がかからないこともあり、朝早くから駐車場が満車になることも。

沖島一周は私がカヤックを始めた数年前から気になっていたプランの一つである。

実は2022年の夏に一度チャレンジを試みたのだが、そのときは水辺でチャプチャプ遊んでいる家族連れから強風により逃げ出したスワンの浮き輪の回収に徹することになってしまった。

というのも、私の所有するDAGGERのシーカヤックに問題はなかったのだが、SUPPER(SUPをしている)である友人MのSUPが比叡山からの北風に翻弄され、沖に出ることができなかったのだ。M曰く「SUPは言うなればビート板のでかいやつやから、風の影響をモロに受ける」とのこと。

風が強く、波が高かったので、岸近くでのローイングとなったのだ。それはそれでまた楽しいひとときであったのだが、本来の目的である一周できなかったことが悔やまれる日々が続いた。

そんな悶々とした日々が続いていた2022年の秋にポッカリと予定が空いた日曜日がやってきた。天気は朝から快晴、風も弱いという予報。これは「THE DAY」の予感が。土曜の夜遅くに荷物を積み込み、カヤックを車の上へ固定する。興奮からかセッティングした目覚ましの時間よりも早く起きてしまうのは私にはよくあること。普段なかなか聞けないPODCASTのラジオを聞きながらエントリーポイントの宮ヶ浜水泳場へ向かう。駐車場もまばらに空いており、準備しやすい場所を確保するやいなや、SUPの団体さまがやってくる。お話を聞いていると、どうやらSNSで繋がりを持たれて各地から集われているようだ。

そうこうしているうちに空もだいぶ明るくなってきたので、前日しっかり装備表を確認をしながら準備をした荷物を一つ一つドライバックに詰め込み始める。マリンコンパスをつけるかどうか迷ったが、海に出たとき用の練習でもあると思いしっかりセッティング。

最近ハマっている360度カメラの「insta360 one x2」も忘れずパワーオン。今回はリモコンを使わずに手の届くところにセッティングをした。カメラを利用する頻度が高い場合は手で操作したほうが素早くできるためだ。このカメラは防水がしっかり効いているので、ハードカバーなどをつけなくても十分対応できる。上下左右すべての範囲の映像がすべて録画または激写されるカメラであり、後から視点を指定して編集することができる。何せ最近のスマホのスペックを持ってすれば、高性能のパソコンを使わずとも4K動画の編集がスマホひとつでできてしまうことには驚くばかりである。

よし、すべてのセッティングと積み込みが終わった。これでいよいよ出立のときが来たとばかりに最後のパドルをセッティングにかかる。2本のシングルパドルを1本のパドルにつなぎ合わせてダブルパドルとして使うのはカヤックの漕ぎ方であり、さらに海などに漕ぎ出す時には、そのつなぎ合わせたメインのパドルが何らかの原因で使えなくなってしまった時用の予備のシングルパドルも積み込むことが多い。私は湖であれ川であれ、漕ぎ出すときは念の為予備パドルも必ず積み込むことにしている。よって、パドルに関してはいつも3本のシングルパドルのうち2本をつなぎ合わせ、1本を予備としてカヤックに積み込んでいることになる。

早速パドルをつなぎ合わせようとしたそのとき、事件が起こった。

そう、3ピースのパドルのうちどの2つもつなげることができないのだった。私は数種類のメーカーのパドルを持っており、間違えて持ってきてしまったのだった。さて、どうしたものかと考えた。

1.自宅に取りに帰る。

2.先程のSUP軍団の皆様に事情を説明し、パドルをお借りする。

3.ショップが開くまで待機し、おニューのパドルを購入する。

といろいろ考えを巡らせているうちに次の考えにたどり着いた。

4.シングルパドルのまま漕ぐ。

何かのトラブルが発生したときは、予備のシングルパドルで漕ぐことになるし、その練習も兼ねてシングルパドルで漕ぐことにした。幸い私のカヤックには舵取り用のラダーが最後尾についており、コックピットから足で操作ができるようになっているのだ。よってカナディアンカヌーを漕ぐときのように左を漕ぎ、その次右を漕ぐという動作をすることなく片側を漕ぐだけでまっすぐ進むことができるのだ。

ということで、無事(?)沖島に向けて出発することとなった。

琵琶湖は湖といえど風が吹くと波が立つ。特に北湖は面積も広く風の影響を大きく受ける。朝方岸近くの風が弱くても、沖へ出ると風が吹いている場合も多く、段々と沖へ出るにつれてバシャバシャと波がカヤックに被さってきた。こんな時に便利なのがスプレースカートである。ホワイトウォーターと呼ばれる急流などを下るときにはゴム製のものを装着し、ピッタリとコックピットを塞いで水の侵入を防ぐようであるが、ここは湖であり、それほどの水が襲ってくるわけでもないので、ファスナーのついた簡易的なスプレースカートを使用した。ゴム製のものは水の侵入を防ぐために、ピッタリと体にフィットしており、なかなかの締めつけ感があるのである。

さて、いざ沖島へと目をやると鳥居さんが目に入ってきたので、まずはそれを目印にシングルパドルを漕ぎ漕ぎすること20分。沖島へ到着した記念に休憩も兼ねて上陸。神社に参拝すべきところではあったが、シングルパドルだけに長旅になるような気配がしていたので、少しの休憩にて水上へ戻ることにする。

日曜日ともあり、ブラックバス釣りを楽しむ方々のバスボートがたくさん浮かんでいる。聞くところによると高級車を買うことができるぐらいのお値段のものもあるらしい。うらやましいなぁと思う部分もあるけれど、自力で漕ぐことの価値に重きを置いている自分にハタと気づかされる。バイクや車などにあこがれた少年時代。より自然に還ろうとしているおっさん時代。

そうこうしているうちに島の裏(北)側へ。比叡山からの吹きおろしの風をモロに受け明らかに波が高くなっている。そろそろ小腹も空いてきたところだったので、途中どこか上陸できるところがないかと探していたところ、ちょうどいい砂浜を発見しカヤックを近づけたところ、押し寄せる波が想像以上にスプレースカートにかぶさりかかってきたため、上陸をあきらめた。行動食を持ってきてはいたものの、風の影響をモロに受けたカヤックはすぐ陸地に近づいてしまい、ゆっくり休憩できないのである。

そんなこんなで、風の受けない島の南側で昼食をとることに。

最近のアウトドアめしでマイブームなのが、「カレーメシ」のシリーズ。お湯を注いで待つこと5分。蓋をあけ、ゆっくりしっかりかき混ぜれば、これまた美味しいカレーの出来上がり。アルファ米とカレールーの絶妙なマッチングが塩分とエネルギーを補給してくれる。飯が出来上がるまでのノンアルコールビールとナッツも必須なのは言うまでもない。

もちろんメシのあとはコーヒータイム。持参したコーヒー豆をDAISOで購入したコーヒーミルセットを使ってグラインド。よりワイルドなコーヒーを楽しむときは、そこらへんの水を浄水するところから始めて、生豆の焙煎も楽しむとなおいとをかし。

まったりと昼食を楽しんでいると、朝出会ったSUP軍団の方々が、沖島から本土へ向けて帰還されているのが伺えた。「SUPは浮力のあるでっかいビート板でもある」という例えのように、かなり風の影響を受けてなかなか前に進んでいない様子もちらほら。一方では定期船で沖島に来られた観光客の方が、私のカヤックと琵琶湖の写真をパシャリ。絵になったのかな。

お腹も満たされ、あとはエントリーポイントまで戻るのみ。旅の終わりが近づいてきていることに寂しさを少し感じつつ、シングルパドルだけで漕ぎ切ることになるという達成感も味わえるという期待も出てきた。短いアドベンチャーではあったが、家に帰るまでがアドベンチャーであり、まずは宮ヶ浜水泳場までを無事に進めなくてはならない。私のカヤックはオレンジ色をしているし、カヤック後部から目印となる赤色の旗をはためかせてはいるものの、ジェットスキーや定期船、バスボートや漁船などとの接触にはかなり気をつけなくてはいけない。しかもこちらはシングルパドルでのよちよち運行である。さらに予報通り朝より風が強くなっており、岸近くの割と朝穏やかだったところもザワザワとし始めているではないか。

とはいうものの、私のカヤックはシーカヤックの14フィートでラダーも付いており名前の通り海での使用も想定されているものであり、信頼して進むことができてきたし、できている。安定感のあるマイカヤックとのアドベンチャーが終わることに寂しさを感じながら、ひと漕ぎひと漕ぎを噛みしめる。穏やかな秋晴れの空のもと、岸に近づくたびに飛び交うイトトンボが目に入ってくる。彼らはゴールの瞬間を祝福してくれているようだ。

@Google Earth

さて、次はマイカヤックとどんなアドベンチャーに出かけようかな。

キャンプ道具を積み込んで、無人島でキャンプかな。

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